第93章 緋色の恋情
「んっ…はぁっ…あっ…」
唇を塞がれたまま寝台へ押し倒されて、朱里の胸の鼓動は激しく脈打ちだす。
「っ…ンッ…信長さまっ…急にどうし…っあっ…」
「朱里、『好きだ』」
「えっ…あっ…」
チュッとわざと音を立てて唇を離しながら悪戯っぽく『好き』と言う信長を見て、朱里はかあっと頬を染める。
「っ…急にどうなさったのですか??」
「んー?貴様が可愛すぎるからだ」
「?それってどういう…あっん、またぁっ…」
ーちゅっ ちゅううっ…
「っはぁ…やぁ…んっ」
「はっ…貴様の口は、塞いでおかねば愛らしさが際限なく漏れるようだ」
「やっ…そんな…」
何度も重ね合わされて徐々に深くなっていく口付けに溺れてしまいそうになる。
互いに舌を絡め合い、口内に溢れる唾液をクチュクチュと混ぜ合わせながら、覆い被さる信長の身体の重みを心地良く感じる。
今宵もまた…そう思うと身体の奥がジクリと甘い疼きを覚えてしまい、朱里は信長の下で身動ぐ。
「くっ…朱里っ…」
「んっ…信長さまぁ…」
「ふぇ…ふぇ〜ん…あぅ〜…」
頼りなげな泣き声に、朱里に覆い被さっていた信長の身体がビクッと反応する。
不意打ちのような吉法師の泣き声に、ぴったり重なっていた二人の身体が揺らぐ。
「あっ…吉法師?」
「……起きたのか?くっ…」
ふーっと全て吐き出すような溜め息を吐いてから、信長は前髪を無造作にくしゃっと掻き上げながら身を起こす。
離れてしまった信長の重みを名残惜しく思いながらも、朱里もまた慌てて身を起こし、吉法師のもとへ駆け寄った。
顔をくしゃりと歪ませて泣いている吉法師を抱き上げてあやす。
「おかしいなぁ…寝たと思ったのに。吉法師〜、ねんねしようね〜」
先程寝かしつけたばかりで、こんなにすぐに目を覚ましてしまうとは…今宵は一体どうしたことだろう。
普段寝つきの良い吉法師には、こんなことはあまりないのだが。
「珍しいな、此奴がそんなにぐずるのは…」
「ええ、具合が悪いわけでもなさそうなのに…どうしちゃったのかなぁ?」
ゆらゆらと揺らしながら再び寝所の中を歩き始めた朱里を見守りつつ、信長は寝台の上に胡座を掻いて座った。
朱里との口付けで昂りつつあったカラダを鎮めるため、そっと目蓋を閉じる。