第92章 帯解き
翌朝、鳥の囀る声で意識を浮上させた私は、寝台の上でゆっくりと気怠い身体を捩る。
(うっ…身体、痛っ!)
身を捩った拍子に全身がギシリと軋んだように痛み、顔をひどく顰めてしまった。
全身くまなく痛いが、中でも腰の痛みがひどい。
起き上がろうと上半身を持ち上げただけで、腰に力が掛かって痛みが生じ、思わず小さく悲鳴を上げてしまった。
(なんで!?なんでこんなに痛いの…!?)
こんなに全身グダグダなのは何故なのだろう……
「目が覚めたのか、朱里………貴様、何をしておる?」
既にきっちりと身支度を整えた信長様が寝所に入ってくる。
が、寝台の上でよろよろと身を起こし悶える私を見て、怪訝な顔になる。
「うぅ…っ…か、身体が痛くて…」
「………は?」
(うぅ…恥ずかしい。これって昨夜のアレのせい?いや、でも今までも翌日にこんなにグダグダになったことなんてないのに……ま、まぁ、昨夜の信長様は、かなり激しかったけど…)
昨夜の濃厚な交わりの余韻はいまだ身体中に残っているようで、そっと両足を擦り合わせると、足の間がにゅるりと滑って…ナカからとろっと熱いものが流れ出たのを感じる。
「っ…あっ…!」
「……どうした?」
思わず慌てて足の間に手を当ててしまった私を、信長様は全て見透かしているかのような意味深な表情で見る。
「うっ…なんでも…ありません」
「ふっ…久しぶりに馬に乗ったゆえ、身体が強張っているのであろう。昨夜は存分に解してやったはずだが…足りなんだか?」
「なっ…解してって…そんなっ…」
甘い情事を思い出させるようなことを言われて、恥ずかしくて何も言い返せない。
そんな私を見た信長様は、嬉しそうに口角を上げて笑う。
その笑顔はとても素敵で、見ているだけで幸せな気持ちになれた。
「堺での用事もあらかた片付いたゆえ、今日の昼には発つ予定であったが…貴様の身体が辛いなら、もう一日滞在を延ばすか?」
寝台の端に腰を下ろすと、信長は朱里の身体を軽々と抱き上げて膝の上に乗せる。
後ろから腰に腕を絡めて抱き締めると、首筋にそっと顔を埋めた。
「あっ、ん…信長さま?」
「今日一日、ここで身体を休めるか?足りぬなら、今一度、たっぷり解してやるぞ?」
「っ……」
(そんなの、身体が持たないよっ…)
「だ、大丈夫です!ご心配には及びませんから…」