第92章 帯解き
朱里が躊躇っている間も、背中に回った信長の手は焦らすように腰の辺りをやわやわと撫でている。
信長の手の熱さが衣越しでも伝わってきて、知らず知らずのうちに腰の辺りに意識が集中してしまう。
「っ…んっ…あっ、ふっ…」
「朱里…早く」
耳元で熱い吐息とともに囁かれると、もう抗えない。
恥ずかしさのあまり顔を背けながら軽く腰を持ち上げると、あっと思う間もなく、足元からするりと袴が抜き取られてしまう。
「やっ、あっ…」
袴を着るために短めに着付けた着物では、太ももまで露わになってしまう。
足元を覆うものがなくなった頼りなさに、思わず身を捩る朱里に、信長はぐっと身体を重ねる。
足の間に割り入って、両の足を左右に大きく開くと、するりと内股に手を滑らせる。
「やっ…信長さま、待って…」
「ふっ…貴様は袴姿もなかなか似合うな。髪もこのように高く結い上げて…勇ましく美しいが…その美しさを乱してみたくなる」
熱っぽく言うと、結い上げた髪を指先で弄びながら首筋に顔を近づけ、露わになったうなじにジュウッと強く吸い付く。
「ああっ!やっ、そんなに吸っちゃ…」
熱い唇の感触を感じて、頭の芯までビリビリと甘く痺れる。
唇が触れた箇所から少しずつ侵蝕されていくように、抑えようのない快感がじんわりと広がっていく。
「……朱里」
徐ろに、大きな手で頬を包み込まれ、欲情に濡れた深紅の瞳が間近に迫る。
「んっ…信長さま…?」
「……あの夜、俺は貴様をどんな風に抱いた?」
「えっ……?」
「記憶にないのが、これほどに口惜しいとは思わなかった。俺が貴様をどんな風に愛して、俺の手で貴様がどんな風に淫らに蕩けたのか…貴様が俺に教えよ」
「あっ…そんなっ…ンンッ…」
ーちゅっ ちゅううぅ…
頬を包まれたまま、深く唇が重なる。
唇をちゅうっと強めに吸い上げながら、こじ開けるように侵入した舌が口内をクルリと舐め回す。
「うっ…ふっ、ぁあっ…」
「っ…はっ…教えよ、朱里。俺は…貴様のどこに口付けた?ここか?」
ーちゅっ…
「あっ、あぁ…」
「……ここは?」
ーじゅっ…じゅうぅ…
「やっ…あぁ…」
「ここは…どう愛した?」
ーくちゅっ…れろっ…ぴちゃっ
「あ"あ"ぁっ…やっ、だめ…舐めちゃ、あっ、舌っ…やめ…あ"あーっ…」