第17章 戦場
『朱里へ
この文を戦場で書いている。
思えば貴様に文を書くのは初めてだったな。
戦は終わった。我らの勝利だ。
これより安土に帰還する。
政宗、家康、光秀もみなよく戦ってくれた。
朱里、泣いてはいないか?
出陣の際に涙を堪えていたのを知っている。
心配するな、と言っても貴様はこれからも俺を見送るたびに不安になるのだろう。
離れている間は貴様の不安を取り除いてやることはできない。
だから、帰ったら存分に俺を感じろ。その身で俺の無事を確かめよ。
貴様が作ってくれた匂い袋は、今も甲冑の下に身に付けている。
貴様の香りを嗅ぐ度に、戦場でも貴様が欲しくなった。
俺も帰ったら直に貴様を感じたい。
朝まで離してやらぬから、覚悟しておけ』