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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第90章 月に揺らぐ


恥じらう朱里を腕に抱き、それからしばらくの間は褥の中で戯れあっていたが、部屋の外の廊下を人が行き来する気配がするようになって、さすがに潮時かと身を起こす。

先に起きて乱れた着物を直し、身支度を整えている信長の傍で、朱里も褥から起きようと身動いだ。

「っ……!」

身体を浮かした拍子に、ギクリとしたように顔を強張らせる。

「……朱里、どうした?」

戸惑ったような表情で腰の辺りを押さえたまま動きが止まっている朱里を見て、信長も怪訝そうに声をかける。

「の、信長様っ…」

「どうかしたのか?……腹が痛むのかっ?」

お腹を押さえてペタリと座り込んでいる朱里の様子に、もしやという気がして慌てて駆け寄った。

「ち、違っ…まだ痛くはないけど、お水が漏れて…」

「は?水?」
(水とは何だ??何のことを言って……っ…!)

朱里の身体を上から下まで確認して、信長は息を呑む。
朱里が座っていた辺りの敷布が小さく濡れている。

大量ではないが、朱里の言い様だと漏れ続けているのだろう。

「朱里っ、これは…腹の中の水なのか?もう産まれそうだということか?」

「多分そうだと…家康が赤子はお腹の中にいる時はお水に包まれてるって言ってたから…でも、結華の時はいきなりこんな風に漏れたりしなかったから…ど、どうしよう…これ、どうなってるの…」

「落ち着け、朱里。すぐに家康と産婆を呼んで来る。貴様は横になって待っておれ。動くでないぞ」

「信長様っ…いや、一人にしないで!」

「くっ……」

必死に袖に取り縋る朱里の心細げな顔を見て、一瞬、躊躇う。
朱里を一人にするのは心配だが、さりとて一刻を争う事態やも知れぬ。
早く家康を呼ばねば…手遅れになってはいかんと朱里を宥めようと向き合ったその時……


「姫様、お目覚めでございますか?」

襖の向こうから、千代の遠慮がちに呼びかける声が聞こえた。

「千代っ!」

「ひぃっ…の、信長様っ!?何故こんなところに?」

いきなりスパンっと勢いよく襖が開いて、中から飛び出してきた信長の姿を見た千代は、あまりのことにその場に尻餅をついてしまった。

「千代、今すぐ家康と産婆を呼んでこいっ!朱里が産気づいたのだ。急いで登城するように言え!」

「えっ、えぇっ!?姫様っ!は、はい、すぐにお呼びして参りますっ」


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