第3章 本当の気持ち
(信長様がお怪我をなさるなんて…どうしよう、深い傷だったら)
(そういえば、お顔の色も少し悪かったみたい…)
自室に戻り1人になると、悪い想像ばかりが頭をよぎる。
居てもたっても居られず、部屋の中をウロウロと歩き回っていると、
「朱里、俺だけど、入るよ」
家康のいつもより少し緊張した声が聞こえて襖が開かれる。
「家康、あ、あの信長様は…」
「今、処置が終わったとこ。天主にいらっしゃる。」
「お怪我の方は」
「傷は深くはない…かすり傷ではなかったけどね。数日安静にしてれば大丈夫」
「っ、よかった」
深い傷ではないと聞いて安心したのか、一気に力が抜けてその場に座り込んでしまう。
(逢いたい、今すぐ。この手で触れて確かめたい)
「……行ってきたら?」
「えっ?」
「逢いたいんでしょ?あんた顔から気持ちがダダ漏れなんだけど」
家康が呆れたように溜息をつく。
「行って自分で確かめてきなよ…ただし、分かってるとは思うけど今夜は安静にしててよね」
「ありがとう、家康!行ってくる」
勢いよく襖を開けて、天主へ続く廊下へ駆け出す。
「あ〜あ。嬉しそうな顔しちゃって」
呆れたように見送る家康の表情はどこか穏やかだった。