第88章 裏切り〜甘い香りに惑わされて
「……寂しい思いをさせたか?」
私の背中に逞しい腕を回して抱き締めながら、耳元で甘やかに囁く。
それだけで、ゾクリと震えるほどに心地好くて、私もまた信長様の背に回した腕に力を込めた。
「信長様…」
互いにきつく抱き締め合いながらも、何と言っていいのか分からなくて、それ以上言葉を紡げなかった。
やがて、首筋にかかる信長様の吐息が熱く、艶めかしい色を帯びていく。
ぴったりと互いの身体を重ねたまま抱き合っていれば、お腹の辺りに次第に感じる熱く硬いモノの感触。
「あんっ…信長様…っ…当たって…」
「っ…分かっておる…すまん、今離れる…」
「やっ、いやっ…」
「っ…朱里…?」
抱き締める腕を解き、私の身体を離そうとした信長様の腕を押さえて、その胸元に顔を埋める。
離れたくなかった。離して欲しくなかった。
「……離れないで」
「っ……」
頬に触れる信長様の胸元は、トクトクと忙しなく心の臓が音を立てていた。
鼓動が騒ぐほどに興奮してくれていると思うと嬉しくて、信長様のことがこの上なく愛おしかった。
(信長様を気持ちよくして差し上げたい)
そっと手を滑らせて、手探りで着物の上から足の付け根の部分に触れる。
着物の前をグッと持ち上げてその存在を主張するモノは、触れた瞬間、ググッと更に大きさを増したようだった。
(っ…こんなにおっきくなって…それに…すごく熱い)
布越しでも分かるほどに大きく反り返った一物の、そのカタチを確かめるように、すりすりっと擦り上げる。
「くっ…朱里っ、待て…」
「嫌っ…信長様、我慢なさらないで…」
「ゔっ…くっ…阿呆がっ…我慢しなければ歯止めが効かなくなる。貴様も腹の子も、どちらも傷つけたくないのだ。俺は…貴様に触れて冷静でいられるほど、できた男ではないっ…」
快感に身を委ねてしまうことを拒絶するかのように、眉間に深く皺を刻み、悩ましげな吐息を溢しながら耐える信長様に、ひどく心が揺さぶられる。
「信長様…貴方が私とお腹の子を気遣って下さることはすごく嬉しいです。でも…無理はして欲しくないんです。私にも、貴方のことを気遣わせて下さいっ…」
「朱里っ……」