第16章 出陣
軍議のあと
いつものように家臣の娘たちと薙刀の稽古をする。
(秀吉さんたちが留守居役だから不安はないけど、信長様が城を空けられる間は、何が起こるか分からない。私たち女子も自らの手で安土を守らなくては…)
「…朱里様、大丈夫ですか?」
だいぶ思い詰めた顔をしていたのだろうか、皆が心配そうに気遣って声をかけてくれる。
「…心配かけてごめんなさい…皆も不安ですよね」
「…私は、父が出陣するのです。信長様のお側にお仕えしているのですが…心配です」
「我が家は父と兄が。無事で帰ってきてくれることを願うばかりです」
(皆、大切な人が戦に行くんだ…私だけがつらいんじゃない。
皆、不安で、でも何も出来なくて…ただ、祈るしかできない…
無事で帰ってきてくれることを…)