第16章 出陣
信長様に出陣を告げられた翌日から、城内は目に見えて戦支度で慌ただしくなっているようだった。
此度の戦では、信長様に付き従い、家康、政宗、光秀さんが出陣し、秀吉さんと三成くんが安土の留守居役を務めるということだった。
(家康、政宗、光秀さんまで出陣するなんて…大がかりな戦になるんだわ…)
今も軍議が行われている広間の片隅で、光秀さんが状況報告をしているのを聞きながら、私はますます不安が募ってきていた。
(信長様はお強いけれど…備後国は遠い…何があるか分からないし、不安だわ…)
「…朱里、アンタ大丈夫?つらいなら下がっててもいいんだよ?」
「っ、ごめん、家康。…大丈夫、最後までちゃんと聞いてるよ。
大事な話だから…」
「………………」
(だめだ、皆を心配させちゃいけない。
信長様たちが安心して出陣できるよう、しっかりしないと)
無理矢理作った作り笑いをみせる私を、上座に座る信長様が憂い顔で見つめていることに、私自身は未だ気付いていなかった。