第85章 黒い影
「………信長様?」
身体を這っていた手がピタリと止まり、腕の中に閉じ込めるように、ぎゅっと抱き締められた。
はぁ…っと深く溜め息を吐く信長様の声は、熱っぽく艶を孕んでいる。
(我慢…して下さったのかな。私だって、本当はもっと触れ合いたいけど…)
お顔が見たくて首を後ろに傾げると、すぐさま顎を捕らえられる。
ーちゅっ……
触れるだけの軽い口づけに、物足りなさを感じてしまうなんて、私はなんて欲張りなんだろう。
『やめて』なんて拒絶の言葉を吐きながら、私の方こそ本当は目一杯愛されたくて、身体の奥はもうぐずぐずに蕩けてしまっていたのだ。
「貴様は俺を煽るのが上手いな。これ以上は…本当に止まれなくなるっ…くっ…」
「あっ………」
もう一度ぎゅっと抱き締められると、お尻に、信長様の硬く勃起したモノがゴリゴリと当たった。
熱くて、夜着越しでも形が分かるほどに硬く張り詰めている。
「信長さま……」
「っ…仕方あるまい。貴様に少し触れただけでも、こうなるのだ」
照れたようにプイッと顔を背ける信長様は、押しつけられる硬いモノの凶暴さとは裏腹に、何だかちょっと可愛かった。
身体の向きを変え、信長様の胸元にぴたっと寄り添う。
心の臓の辺りに頬を擦り寄せると、トクットクッと心地よい生命の音が聞こえる。
そのまま顔を上に向けると、頬を朱に染めて少し苦しそうな表情をした信長様と目が合った。
「くっ…朱里っ…そんな目で見るな。抑えられなくなるっ…」
その珍しく余裕のない姿に愛おしさが募った私は、向かい合ったままで、そっと信長様の足の間に手を伸ばした。
存在を主張するように、その部分が不自然に盛り上がった夜着の上に手を這わせ、形を確かめるようにすりすりと撫で摩ると、手の平にじんわりとした熱を感じる。
(んっ…熱っ…それに、すごく硬くなってる…)
「くっ…はっ…あぁ…朱里っ…」
ピタリと密着させた、信長様の身体は熱く、私の頭上で吐かれる吐息もひどく熱っぽい。
いつもより乱れた様子を見せる信長様に、興奮を掻き立てられた私は、硬くなった昂りに直に触れようと、腰紐に手を掛けた。
「っ…朱里っ…やめよ」
「だ、だって、このままじゃ…」
信長様に気持ち好くなって欲しい…昂ったモノを私が癒して差し上げたい…ただ、そう思う一心だった。