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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第85章 黒い影


「えっ? こんな状況に、良いことなんてあるの?」

「かねてより、光秀様に批判的だった者たちが、織田軍内で急激に勢いを増しています。軍内部の反乱分子を事前に取り除いたことで、織田軍の結束はより高まるでしょう」

「それは、そうかもしれないけど……。そんな言い方はひどいよ」

「我々の置かれた状況を簡潔な言葉で説明すると、そうなってしまうのです」

三成くんの表情が、何かを堪えているように微かに歪む。

「………私には、光秀様が裏切っているかどうか、今はまだ結論を出せません。情報が足りないのです。光秀様ご自身が口を開いてくださらない限りは……」

(三成くんっ……)

膝の上で爪が食い込むほど強く握られた拳を見て、こんな状況でも冷静さを崩さないように見えていた三成くんの胸の内が、ふと腑に落ちたような気がした。

光秀さんの投獄に、胸を痛めていないわけじゃない。けれど三成くんは……織田軍の置かれた状況を感情抜きに把握し、分析しなければならない立場にいるのだ。

(三成くんだって辛いんだ…何も出来ない私が、責めるような言い方しちゃいけない)

「すみません、朱里様。つい話し込んでしまいました。お身体の方は大丈夫ですか?休んでおられなくても平気ですか?」

「うん、大丈夫。心配しないで。私の方こそ、余計な口出ししてごめんなさい。忙しいのに来てくれてありがとう」

「いえ、とんでもないことです。私はいい加減、お暇しますね。朱里様のお休みを妨げては、信長様に叱られてしまいますから」


帰り際、三成くんはようやく笑顔を見せてくれたけれど、いつもの天使のような輝きは弱まっていて、どこか寂しげだった。


(光秀さん…今、どうしてるんだろう。拷問なんて……。
光秀さんが信長様に謀叛なんて…私には信じられない。
あの人の考えていることは分からないことも多いけど、信長様の目指す、誰もが身分に左右されない世の実現を、光秀さんだって望んでいたはずだ。
そんな人が、自らの民を下賤と見下げるような将軍の味方に付くわけがないっ…)


光秀さんの真意が知りたい。

私に出来ることはないのだろうか……


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