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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第85章 黒い影


刃を受け止めた腕から流れる血など目に入らぬかのように、秀吉は刀を構え直し、討って出て……やがて織田軍は、黒装束の集団を一人残らず拘束した。

「貴様がおると、俺が刀を振るう暇がないな」

肩を竦めながら、信長は刀を鞘に収める。

秀吉は刀に付いた血を払いながら信長の元へと駆け寄ると、少しも呼吸を乱すことなく、その足元に姿勢よくきっちりと膝をつき、首を垂れる。

「御館様、ご無事でなによりです」

「あぁ、大義であった」

鷹揚に頷く信長の、常と変わらぬ落ち着いた姿に笑みを見せた秀吉であったが、すぐに表情を険しくする。

「では、不届き者どもの、将の顔を改めましょう」


見ると、襲撃者達は縛り上げられ、地面に転がされていた。その中へ、信長はゆったりと歩みを進め、顔を布で隠した一人の男の頭を掴みあげた。

「貴様が、この者たちの頭だな」

「なぜ、私だと」

「貴様だけは傷つかぬよう、部下どもが器用に立ち回っていたからだ。この俺に奇襲をかけた度胸は、褒めてやろう。貴様の名を聞いてやっても良いぞ」

信長は冷酷な笑みを浮かべ、敵将の口元を覆う布を乱暴に引き剥がした。
顔を露わにされた男は、苦々しく頬を顰めはしたが、憎しみの籠った目で真っ直ぐに信長を睨みつける。


「我々を捕らえたからといって、図に乗るなよ、信長」

「お前は……」

敵将の男のその顔に、信長も秀吉も見覚えがあった。

『真木島秀光』
足利義昭の側近であり、信長が義昭と手を組んでいた頃には、秀吉もこの男と交渉することがあった。
義昭が京を追われた際には備後国へも付き従っていたはずだ。



「これは、貴様ひとりの計画ではあるまい?貴様の裏で糸を引いておるのは……くくっ…面白いことになってきおったわ」


少しも動じることなく微笑する信長を、真木島は睨みつける。

「笑っていられるのは今の内だぞ、信長。お前のような卑しき下賤の者の命など、消されて当然なのだ」

「ほざけ、下郎がっ!」

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