• テキストサイズ

永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第84章 星に願いを


いよいよ明日は七夕……という前日、私は笹竹のある中庭に向かっていた。

迷いに迷ったお願い事を、ようやく短冊に書き終えた私は、心なしか少し早足になっていた。

(我ながら迷い過ぎたな、もう明日は七夕で、皆はとっくに書いてるっていうのに…)


笹竹は既に、色とりどりの七夕飾りと短冊でいっぱいになっていることだろう。
その光景が頭に浮かび、思わず口元が緩む。

(皆、どんなこと書いてるのかな…ふふ、ちょっと見てみようっと)


結局、信長様には言えなかった。
優しい信長様は、私がお願いすれば書いて下さったかもしれない。
でもそれだと、ニセモノの願いになってしまうような気がして、どうしても言い出せなかったのだ。

(たかが七夕祝いの短冊に、こんな風にこだわるなんて、自分でも子供っぽいと思うけど…やっぱり、信長様の気持ちは大事にしたいから)

そんな風に考えながら広い中庭を歩いていると、笹竹の前に人影が見える。

(あれ…誰か来てる………あれ?…あれはっ…信長様っ!?)

目を凝らして見れば、見慣れた白い羽織の後姿。

さらりと吹く風に揺らめく笹竹を見上げる姿に、何となく、見てはいけないものを見てしまったような気がして、思わず近くの木に隠れてしまった。

さらさらと揺れる笹の葉の音に耳を澄ませるように、すっと目を細める信長様の横顔は、うっとりするほどに美しくて、私は目が離せなかった。

(信長様……何をなさってるんだろう)


明日はもう七夕当日ということで、笹竹の飾りつけも終わり、今日は中庭に来る人もあまりいないはずだ。
まさかここで信長様に会うとは思ってもみなかった。

七夕祝いの宴は楽しみにして下さっているようだったけど、笹飾りを自ら見に来られるとは思わなかったのだ。



しばらくの間、風に揺れる笹の葉を眺めていた信長様だったが、徐に着物の袷に手を差し入れる。

(ん?何だろう…って…えっ!?あれっ……)

袷から出された信長様の手に握られていたものを見た私は、危うく声を上げそうなぐらい驚いていた。


それは………紫色の短冊だったのだ。









/ 1946ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp