第84章 星に願いを
「朱里……?」
黙ってしまった私を、心の底から案じるような優しい声。
俯く私の頬をふわりと撫でる、大きくて温かい手。
信長様の優しさと温かさを深く感じるほど、ほんの少しの考え方の違いが、心の内を寂しくさせる。
夫婦だからといって、自分と同じように感じてほしい、想いを共有したいなどと願うのは、我儘なことだと分かっている。
信長様には信長様の考え方があって、私はそういう信長様を好きになったのだから……
(それに、信長様は『自分は星に願い事はしない』と仰っているだけで、私や城の皆が願い事をすることまでを否定されているわけではない。
七夕祝いの宴を開くことも、楽しみだと言って下さったし……。
我が儘言って、私の考えを押しつけるのは、よくないよね…?)
頬を撫でる大きな手を、上からそっと包み込んで、心配そうに私を見つめる深紅の瞳を見上げる。
互いの視線が絡まった瞬間、吸い寄せられるように唇が重なった。
「んっ……」
ちゅっ、ちゅっ、と啄ばむような軽い口付けが、何度も何度も繰り返される。
唇から始まった口付けは、頬、目蓋、額、と顔中に広がって、それではまだ足りないと言わんばかりに、耳朶へ、首筋へ、鎖骨へ、と信長様の深い愛情を示すかのように、次々に広げられていった。
「んんっ…あっ、っ…はっ…」
(……っ…くすぐった、い…)
唇が触れた箇所がじわじわと熱を持ち始め、身体中が少しの刺激にも過敏に反応してしまう。
「……信長さまっ…んっ、待って…」
(昼間からこんな口付けされたら…もう何も考えられなくなる)
「待てん。もっと寄越せ」
熱の籠った甘い声に蕩けさせられるように身体の力が抜けていった私は、与えられる熱にそっと身を委ねた。