第83章 心とカラダ
朱里の手の上に自身の手を重ねて、ぐにゅぐにゅと乳房を揉んでいると、足の付け根の辺りがじわじわと熱を帯び始める。
むずむずと落ち着かなくなり、知らず知らずのうちに足を擦り寄せてしまっていた。
(これは…おかしな気分になるな…)
男のモノが急速に昂ぶるのとは違い、じんわりと腹の奥が熱くなっていくような、初めての感覚に戸惑っていると………
「ちょっと…遊んでないで、早くして下さい」
衝立の向こうから、ゴホンッとわざとらしい咳払いとともに、家康の不機嫌そうな声が聞こえた。
俺の力が緩んだ隙に、パッと手を引っ込めた朱里は真っ赤な顔をして下を向いている。
その何とも初々しい仕草が可愛らしくて口づけたくなるが、自分が女の姿なのが妙な感じがして……らしくもなく躊躇ってしまう。
「うぉっ…御館様っ…お、お美しいっ…」
着替え終わって出ていった途端に、秀吉に仰け反りながら褒められて、なんとも言えない複雑な気持ちになる。
「やめろ、秀吉、気持ち悪い。さっさと報告書を運んでこい。今朝の軍議は中止だ。政務はここでやる。午後からの城下の視察は、この格好で朱里と二人で行く」
「は、はいっ、御館様っ」
「……待て、『御館様』と呼ぶのは禁止だ。それだとすぐに俺だと分かってしまうではないか。そうだな……俺のことは『吉乃』とでも呼べ」
「………吉乃(きつの)様…?」
「そうだ。織田家ゆかりの姫とでもしておけ。俺(信長)のことは、外出中ということで通しておけばよい」
「は、はぁ…」
確かに、化粧をした信長様は、さすがは兄妹というべきか、お市様にもよく似ていて、織田家ゆかりのお姫様だと言われてもおかしくはない。
「朱里も、そのつもりで、な?分かったか?」
「は、はい……えっと…吉乃様…?」
辿々しく答えた私に、にっこりと満面の笑みが返される。
「良く出来ました」と言わんばかりに、ぽんぽんと頭まで撫でられてしまった。
(っ…破壊力抜群……美し過ぎます、信長さまっ…)