第83章 心とカラダ
朱里が持ってきた小袖は、黒地を基調に、裾に金糸銀糸で小花柄がいくつも刺繍された華やかなものだった。
以前に俺が贈った小袖だとは思うが、最近、朱里が着ているところを見たことがないから、本人はあまり気に入っていないのかもしれない。
「信長様には、やっぱり黒が似合うと思います。この小袖、信長様から頂いたものですけど、私にはちょっと華やか過ぎるかなって思って、着れなくて…」
申し訳なさそうに言うのが、また何とも健気で可愛い。
(俺が好きで贈っているのだから、気にせずともよいのに……)
小袖と襦袢を受け取ると、迷うことなく腰紐をシュルリと解いて、着ていた夜着を一気にその場に脱ぎ落とした。
「わ、わわわっ…ダメですっ!そんな、人前で脱いじゃ…」
纏うものがなくなり、生まれたままの姿で仁王立ちする信長様の肌を、慌てて小袖で覆い隠す。
「何を言う、人前などと…秀吉や家康の目を気にしてどうする?長期の遠征では、互いに裸になって水浴びをすることもあるのだぞ?俺の裸など、見慣れておるだろう?」
「もぅ、それは男の信長様の裸でしょ?今のお姿は……刺激が強過ぎますっ!」
無防備過ぎる信長様の、完璧な裸体を目の当たりにして、秀吉さんも家康も完全に毒気を抜かれたように放心している。
(俺は…見てはいけないものを見てしまった……)
(はぁ…いきなり脱ぐなよっ!っ…反応しちゃったじゃないか…)
「くくっ…二人とも、黙りこくって如何した?よもや、俺の裸で欲情したのか?これは…益々面白い。光秀たちにも、この事態を知らせて、彼奴らの反応も見るか…」
「「だ め です!」」
朱里に手伝わせて、衝立の向こう側で小袖に着替え始めた信長は、頬を赤く染めて恥ずかしそうにしている朱里を可笑しそうに見ている。
「くくっ…同じ女の身体なのだから、そう恥ずかしがることもあるまいに……」
「だ、だって……」
着替えの為に、指先が肌に直接触れるたび、ピクリと震える愛らしい姿は、可愛くて可愛くて…逆に虐めたくなるものだ。
朱里の手をやんわりと掴むと、きちんと整えられたばかりの袷の間へと導いて、己の胸をぎゅっと包み込ませる。
「っ…あっ……」
「くっ……ふっ…」
ぐにゅぐにゅと胸を揉まれる、初めての感触は、想像していたよりも、ずっと気持ちが好かった………