第83章 心とカラダ
「………………」
(なんで!?なんでー!?どういうこと!?の、信長様に胸が…信長様の身体が……女の人の身体になってる!?)
驚きで目を泳がせる朱里の様子を訝しんだ信長は、朱里と家康が息を呑んで見つめる視線の先、己の身体を振り返る。
「………これは…どういうことだ?」
胸元の膨らみに触れながら、不審そうに呟かれた声は、いつもの信長様の声よりも高くて、寝起きだからか少し掠れているのが、また艶っぽかった。
「っ…すみません…俺のせいです」
頭を抱えながら、この世の終わりみたいな声で家康が謝る。
「い、家康っ…どういうこと!?なんで信長様がこんなことに…っていうか、昨日の夜、寝るまでは普通だったよ!?」
(そう…昨夜も甘く優しく愛されて…男らしい胸元に抱かれて眠りについたはず……それが何故!?)
「ごめん、朱里。ちょっと落ち着いて…ちゃんと説明するから。…信長様、その…身体、おかしいのは胸だけですか?っ…あの、下の方は……?」
言いにくそうに言葉を濁す家康に対して、信長様は自身の身体に手を這わせていき、夜着の上から下半身に触れて……
「………ない、な」
ニヤリと不敵に笑ってみせた。
(いや、それ、笑うとこ?というか、『ない』って?あ、アレがないってこと!?)
落ち着き払っている当人とは反対に、私の頭は混乱するばかりで、もうどうしていいのか分からずに、信長様と家康を交互に見るばかりだった。
「すみません……昨日の薬のせいです」
「薬?昨日のは、疲労回復の薬ではなかったのか?」
「それが……どうやら間違ってたみたいで…俺の確認不足です」
項垂れる家康を見つめながら、何事か思案するように黙った信長様は寝台の上に胡座を掻いている。
夜着の裾が乱れて露わになったふくらはぎは、色白で柔らかそうで女性らしい曲線を描いている。
改めて見ると、纏う雰囲気も何となく、いかにも女性らしい嫋やかさと妖艶さを放っているようだ。
元々の美しく整ったお顔立ちはそのままに、体つきが女性らしくなっているため、そこらへんの女よりも、もっとずっと美しい。
(っ…見惚れちゃう…元々、女装とかも似合う人だったけど……これはちょっと綺麗過ぎるよ…)