第83章 心とカラダ
天主に明るい陽射しが射し込む穏やかな朝だった。
梅雨の晴れ間か、昨夜までしとしと降っていた雨が嘘のように今朝は晴れやかな朝日が昇っているようだった。
「信長様っ!起きてますかっ?入りますよっ!」
(………んっ…だれ?…この声…いえやす??)
天主の入り口の襖がスパーンっと勢いよく開く音に目覚めた私は、起き抜けのぼんやりする頭で、褥の中でもぞもぞと身動いだ。
そっと隣を窺うと、信長様もまだ眠っておられるようだった。
(珍しい…いつもは日の出前には起きていらっしゃるのに…今朝はもう朝日が昇り始めてるみたい…)
こんな時間から家康が天主に来るなんて珍しい。
まだ夜着のまま、なんて恥ずかしい…早く起きて着替えなくては家康を待たせてしまう、と慌てて起き上がる。
「あの…信長様?起きて下さい、家康が……」
私の方に背中を向けて横になっている信長様に、そっと呼びかけた瞬間、寝所の襖がこれまたスパーンっと勢いよく開いて、家康が飛び込んでくる。
「わっ!家康!?な、何っ?」
「ごめんっ、朱里っ…無礼なのは許して!緊急事態なんだ」
はぁはぁと荒い息を吐く家康は、言葉どおり切羽詰まったような顔をしている。
天主まで慌てて駆け上がってきたみたいだ。
「信長様っ!」
「…………騒々しいぞ、家康。俺の寝所に無遠慮に踏み込むとは… 無礼にも程があるぞ。貴様、一体どういうつもりだ?」
気怠げにゆっくりと身体を起こした信長様は、家康をギロリと睨みつける。
「の、信長様っ…」
「……ん?何だ…??」
起き上がった信長様を見つめる家康は、信じられないものを見るかのように目を見開き、顔を引き攣らせる。
「どうしたの、家康?大丈夫??何をそんなに驚いてるの?って…ええっ?あぁっ…!?」
家康の視線を追って信長様の方を見た私は、予想外の光景に心の臓が止まるかと思うほど驚いた。
「の、信長様っ…そ、そのお姿は……」
「………ん?」
気怠げに髪を掻き上げながら寝台の上に起き上がった信長様
起きたばかりで乱れた夜着は、袷が開き、はだけた胸元が露わになっている。
それは…逞しく鍛え抜かれた日焼けした胸板………ではなくて。
柔らかく、たわわで白雪のように色白で、豊かな乳房……だった。