第1章 洋紅色に染まる【一十木音也】
ふと目を開けると、目の前に香澄のパジャマの柄が見えて、一瞬思考が停止した。あれ、いつの間に寝たんだっけ。
俺の頭を抱え込むように香澄の手が後頭部に触れていた。いつもなら、俺が腕枕しているから、香澄の顔を見上げるのって新鮮だ。
いつもと逆転してるな、と目の前に広がる布地に、やんわりと額を押し付けてみる。柔らかな肌に布越しに触れているのが分かって、顔に熱が集まるのを感じた。
「っ香澄、この体勢きついよ俺……」
香澄は寝ているのに、起こしちゃダメなのに、起こしたくなる。起こして、香澄の肌に直接触れたくなる。俺ってこんなに変態だったっけ。
触れ合っているからきつい。余計なこと考える。離れれば良いのに、香澄から離れたくなくて、ますます額を押し付けて、鼻を擽る香澄の匂いを吸い込んだ。香澄の腰に回している腕にほんの少し力を入れて、身体を密着させると、少し安心した。
「ん……お、とや……?」
「……ごめん、起こした?」
本当は、わざと力入れて、起こした。
「いーよ……おはよ」
「おはよ、香澄」
おはよ、なんて言ってるけど、夜中なのはカーテンの向こうが暗いからわかるし、香澄のまぶたはすぐにでも落ちそうだし。
「おとや……ちょっと、くるしい……」
「ごめん、香澄。重かったよね。ほら、頭こっち」
香澄の身体をぐっと引き寄せて、頭の下に腕を差し入れた。俺の胸元に擦り寄ってくる香澄がめちゃくちゃ可愛い。さっきと逆転した視界。香澄のとろんとした顔見下ろすのって、やっぱり特権だよな。
「へーきだよ……でも、音也の腕枕……落ち着くから、すき……」
「そっか、良かった」
とろとろと、また眠りに落ちそうな香澄の額に唇を寄せて、名前を呼んだ。
「ねえ香澄」
「なあに、音也」
「だいすき」
「ふふ、私もだいすき」