第5章 糖度:30%
食べ終わって教室戻っている途中、私はふと気になって尋ねた。
『そういえば、なんで私に声かけてくれたの?
私も不良なのかって疑ってたんでしょ?』
波瑠の顔を覗き込むが、表情は読み取れなかった。
「うーん...
茅野ちゃんに、一目惚れしたの
可愛い、友達になりたいなって」
想像と違いすぎる返答に私はびっくりした。
まさかそんな理由で声をかけてくれてたとは。
『可愛い波瑠にそんなこと言われるなんて、嬉しいな
...って早く戻らないと、授業始まっちゃう!』
なんだか照れ臭くて、私はそういって階段を駆け降りた。
(もう少し仲良くなったら、不良苦手な理由も
聞いてみよう)
* * *
「_____で、これがxになるから、yは__」
春の過ごしやすい気温に、午後のやわらかな日差し。
先生の落ち着く声と静かな教室。
私は、睡魔と闘っていた。
(まずい、寝そう
雄英目指してるんだから、今のうちからちゃんと勉強しておかないと....
でも睡魔はいつもウェルカムで過ごしてきたから....)
瞼に錘でも乗っているのだろうか。
力を入れても入れても下がってくる。
なんとか目を覚すために、外の風景を見ようと視線を左向けると
勝己と目が合ってしまった。
(わ、なんでこっち見てんの、、!)
心臓がどくんと跳ねた。
勝己に腹を立ててるとは言っても、なんせ顔面国宝級なのだ。
(眉間に皺寄ってないと、ほんとに破壊力やばいんだよな
普通にしてれば、絶対モテるのに
もったいない)
そんなことを考えてしまって、つい、じっと見過ぎたことに気付いた。
慌てて目を逸らそうとすると、なにやら口もとが動いているようだった。
"ね る な"
そして口角が片方、少しだけ上がった。
私の好きな、勝己の表情。
私の顔に熱が集まってくのがわかる。
(ずるい、勝己は)
"お き て る"
と口パクを返して、顔が赤いのがバレないように
ノートに目線を戻した。
瞼の重さはもう、感じなかった。