第5章 糖度:30%
「おい、帰んぞ」
放課後、私はスクバに教科書を移していると
机の前に勝己がやってきて、ぶっきらぼうにそう言った。
『ふふ、しょうがないなあ』
(いつも、ごめんって言えないから
その代わりにちょっと甘くなるの、知ってるよ)
『おまたせ、帰ろっか』
席を立って勝己の隣に並ぶと、近づいてくる足音がした。
「茅野ちゃん、帰るの?」
『あ、波瑠
うん、帰るよ』
波瑠は何か考えるような顔をして、
「爆豪くん、と仲直りしたの?」
と聞いてきた。
「喧嘩なんてしてねーわ!」
私はいつもこんな感じだからって言おうとしたのだが、それを遮って勝己がキレてしまったので私は焦って
『いつもこんな感じだからね、ごめんね波瑠』
と告げて、これ以上勝己がキレ出す前に帰ろうと
波瑠に別れを告げて校舎を後にした。
* * *
勝己の家でゲームをしていると、光己さんがお菓子を持ってきてくれた。
コントローラーを置いて、クッキーを口いっぱいに頬張る。
あ、と勝己がコントローラーを持ったまま口を開けたため、そこにクッキーを放り込んだ。
「そーいえば今日、茅野の母さんたちいねーんか」
クッキーを食べ終わる前に喋るから、もごもごしてて可愛い。
『うん、パパとママが出張なの』
とちょっと寂しそうに言うと、奥にいて話を聞いていた光己さんが口を開いた。
「あら、じゃあ家に泊まっていきなよ
茅野ちゃん1人だと色々怖いしね」
その色々にはきっと、私の家事の出来なさも含まれているのだろう。
『じゃあお言葉に甘えて、、』
と言いながら隣をちら、と見ると
なにやらプルプルと小さく震えていた。
「勝己!茅野ちゃんのことちゃんと見てあげんのよ!」
「わーってるわ!!!」
光己さんに勢いよく返事すると、コントローラーを投げるように置いて何処かに行ってしまった。