第5章 糖度:30%
* * *
今日から、通常の授業が始まる。
茅野が少しだけ慌てながら準備をしていると、ドアが空いた。
『あ、勝己おはよ〜!
ねぇ私今からメイクするから勝己髪の毛やってよ』
「あ"?貸せ」
強引に茅野の手首にあったゴムをぶん取り、
片眉を吊り上げながらも文句を言わずにやってくれる勝己を茅野はニコニコと鏡越しに見つめた。
そんな茅野に何か言ってやろうと口を開く。
「ッチ、おまえまた髪サラサラにしてんじゃねぇ
滑って結いにくいじゃねぇか!!」
口では暴言を吐きながらも手つきは変わらず優しく、丁寧。
そんな勝己にまたきゅんとしながら、
『それ、褒めてくれてるってことでいいよね?
勝己は昔から私の髪の毛触るの好きだから、頑張ってるんだよ〜』
とまた笑みを浮かべて言うと、何故か勝己の顔は昨日あげた煎餅のようにみるみる赤く染まり、やがてボンッという音が聞こえた。
一瞬で部屋に焦げ臭い匂いが充満し、
「あ。」という呟きだけが響く。
『....ちょ、わぁぁぁ勝己!?
ちょっと!!髪!爆破しないで?!?!
あ〜ちりちり!!!!!もう!!!!!!ばか!!!!』
茅野は髪に触れて5分前に時間を戻しながらため息をついた。
その内心は、
(あ〜、髪爆破されちゃったよ
憧れまた1つ叶ったね私!おめでとう!これで勝己が申し訳無さそうななんとも言えない表情しながら
謝るか謝らないか迷った挙句に髪の毛一瞬で可愛くしてくれて出て行くって言うシチュ叶ったら妄想の通りすぎて最高なんだけど....)
と、限界オタクの思考なのだ。
そして勝己は、フラグを回収して出て行った。
『は〜〜〜、こんな幸せでいいのかなぁ....
推しが妄想叶えてくれる世界線、ここにあったよみんな....』
そんな呟きは、部屋に吸い込まれて消えていった。