第5章 糖度:30%
「....ん??」
何か言いにくいことでもあるのだろうか。
なんだろう。
勝己のことだからまたとんでもない無茶振りでもさせられるのか、とつい正座をして身構えてしまう。
「.........キ」
「き???」
(そんなに言いにくいことなの??
キ....キ....キから始まる言葉で.....んー.......)
「あ!!!!!もしかして!!
キ」
「っだぁぁぁぁあああああ!!!!!
なんでもねぇえわ!!!帰る!!!!」
顔をなぜか真っ赤にして出て行く勝己を、止めることも出来ず
ポカーンと間抜けに口を開けたまま見届けた。
「筋トレ一緒にしないか、って言われると
....思ったんだけど、違かった....みたい?」
嵐のように過ぎ去った勝己の言いかけた言葉を気にしながらも、机の上に置かれたから揚げを1つ、つまんだ。
「んー、さすが光己ちゃん♪
...明日の朝にでもまた、聞いてみよーっと」
* * *
〜勝己side〜
茅野の家に入ると、誰もいなかった。
(トキコさん、出かけてんのか)
リビングを見渡すが、誰もいる様子はない。
無言で置いて行くわけにもいかない、と理由をつけて、茅野の部屋に行ってみることにした。
ノックをするか、声を掛けるか、それとも無言で入るかドアの前で悩んでいると
1人のはずの茅野が何やら騒いでいる音が聞こえてきた。
(てか俺、前は普通に入ってたのに
今になって部屋の入り方迷うとかなんなんだよ?!)
自分にイラッとしながら勢いでドアを開けたが、
茅野はいつものようにクマのぬいぐるみに顔を突っ込んでいた。
その姿が、小さい頃から見てきた姿と重なって。
(なんだ、これ
....キスしてぇ)
俺らしくない、そんなことを思ってしまった。
(って何思ってんだ俺ぁ?!
こんな事考えてるとかその辺のモブ共と同じじゃねぇか!!!)
そんなことを脳内で葛藤している間も、茅野はこちらに全く気付く様子もない。
キスしたい欲が爆発する前に声をかけてさっさと出よう、と思ったその時だった。