第5章 糖度:30%
だってそれは、あるはずのないもの…
出会った日にした、キスの写真だったからだ。
「……な、んでこれ…!?」
「だって二人が心配で着いていったら気付かずに
いい感じだったから、可愛いし記念にって撮って現像したの
勝己は出会ってすぐの女の子にキスしちゃうような肉食かってあのとき思ったのよね~
にしても今の勝己はなんでそんなに茅野ちゃんに対して…」
ペラペラと語り出す母の言葉を聞いて、顔が赤くなるのが分かった。
そりゃそうだろう。
いくらガキの時とは言え、その行為が見られていて、そして自分で見る羽目になるのだ。
「だぁああああ!!!
いらねぇし!!」
「あらそう?じゃあ茅野ちゃんにあげるわ」
そしてそれを茅野にも見られるなど、自分も恥ずかしくてたまらないし
茅野も同じような思いをするのはよくないと思った俺は
「い!る!わ!!」
と写真を奪いとって
クローゼットに封印したのだった。
* * *
「…ハッ、バカだな俺は」
思い返して、
俺は過去の自分に
嫉妬してしまった。
そんな自分に呆れて笑いながら
最後にキスしたのはいつだっただろうと考えて
(もうしばらく、してねぇな)
こんなことを考えるなんて自分らしくない、と思考を書き消すように筋トレをした。