第5章 糖度:30%
~爆豪side~
当たり前のように、茅野を送り届けると
家に入っていく小さな背中を見届けて
自分の家へと戻った。
足取りは、なぜか重い。
(クソ、あいつ可愛すぎんだよ
しかも無自覚で鈍感なのが余計腹立つ)
頭をガシガシと乱暴にかきながら
誰にキレているのかも分からず頭のなかで理不尽な悪態をついた。
なかなか素直になれず、本心を語れない自分にとって
アピールする相手が鈍感というのはとても困ることだった。
(まぁ茅野が恋愛に鋭いのもなんか…
違和感感じるか)
たとえゆっくり歩いても、五分かかることなくついてしまう見慣れた家。
またババアになんか言われんのか、と少し憂鬱になりながらも
弱気な自分を殺すように眉間に力を込めて、勢いよくドアを開けた。
「帰った!!」
無駄に怒られるのは避けたいので、一応声をかけ
小言を言われる前に部屋へ籠ってしまおうと早足で階段を目指す。
…がそれが許されず
「ちゃんと茅野ちゃん送ってきたの?」
と聞かれてしまった。
(なんでそんなこと今更聞くんだ)
「ったりまえだわ!!」
なぜそんな当たり前のことを聞かれたのか、ちょっとイラッとしながら階段をかけ上がった。
部屋に入り、着替えようとクローゼットを開けると誰にも見られないようにしまってある写真が目に入った。
それは、あいつと出会った日。
二人で行った公園で
約束を交わした時の、ものだ。
なぜその写真があるのかというと、それは…
* * *
「勝己、いいものあげる」
小6の頃、遊んで来て家に帰ると
母に呼び止められ、あるものを渡された。
「んだよ…?…っ!?!?」
俺は驚いて、母を怒鳴る言葉も出てこず、阿呆みたいに口をパクパクと動かした。