第5章 糖度:30%
帰り道。
どことなく変な距離感で、
でも二人並んで、歩いた。
あれから、これと言った会話はない。
ただ無言で、近くも遠くもない距離で歩き続けている。
茅野は沈黙に耐えられず、口を開いた。
『あの、さ…!!』
そう、言ってから気付く。
(やば、何も話すこと考えてない…!!)
隣からは、視線を感じる。
いくら気まずくてもちゃんと、顔を見て話を聞いてくれるようだ。
だが今はそれは嬉しいというより
何を話そう、と余計焦ってしまうから
正直前を見てて欲しかった、となんとも自己中でバカな考えをしてしまう。
こんなくだらない思考をしてしまっている間にも、こちらへ向かっている視線はどんどん強くなっていっている
…気がするのは、気のせいであってほしい。
『…っあ!!!
そうだ、今度パパとママ両方居ない日あるから、久しぶりに勝己ん家に泊まっちゃおうかなっ!?』
なぜか頭にふと舞い降りた内容は、朝、両親が話していた出張の話だった。
焦った頭で、慌てて会話のネタを作って早口で話した。
なぜこのタイミングで、
なぜこんなことを言ってしまったのだろう、
と話終えたことで安心して冷静になった頭で後悔した。
だが時既に遅しで、
ギギギ…という音がなりそうな首で横を見ると
片眉を吊り上げながら呆けた顔でこちらを見ていた。
「…は?」