第4章 不良少年誕生
(……へ。)
驚きすぎて、固まったまま動かない茅野。
心臓は大袈裟にバックンバックンと音をたてている。
唇と唇の間は、僅か3cmだった。
辛すぎて出ていた涙も、少しぷっくりと腫れてしまった唇のことも、もう頭になかった。
「…んでそんな赤くなってやがんだ!!」
横からいつものガスガスの声が聞こえて、茅野はやっと息をした。
『だ、って急に…っ』
「キスなんてガキのころ毎日のようにしてたじゃねーか!!
何で今更こんなんで照れて…」
『とかいって勝己も赤く…』
「なってねぇぇえわアホ!!
お前が無駄にりんごみてぇになってっからだろ!!」
否定してるくせに人のせいにするという、赤くなっていることを認めているようなよくわからない発言をする勝己。
事の張本人の勝己自信も焦っているのである。
(…っクソ、ほぼ無意識だった…!!
こんな赤くなって、意識されてるってことかよ
平気でだきついたりしてくるくせに…)
(何で急に少女漫画みたいなことしてくれるのっ!?
現実で好きな人にそーゆーキュンキュンすることされると、心臓やばいよ…!!)
そしてその茅野の反応には大きな理由があった。
それは、茅野がもう勝己を一人の人として見れていて、
そしてこの世界を現実だと認識しているということ。
その気持ちや考えの変化から、勝己への意識が変わったのである。
それがもう当たり前となった茅野は、もう自身の変化に気付くこともない。
確実に、茅野はこの世界の人間になれているということだ。
…この、茅野の小さな気持ちの変化が
やがて超人社会であるこの世界を大きく動かすことになるとは
誰一人、知るよしもなかった。