第3章 距離
~茅野side~
『…ん』
(あれ、今何時だろ)
ふと目が覚めて、時計を見るために起き上がろうとした時。
視界が暗くて何も見えない。
そしてなぜか体が重くて持ち上がらなかった。
瞬きを繰り返して、しっかりと目を開けてみる。
(……え。これって)
思い当たるものがあって、そのまま顔をあげて上を確認してみると
『…か!?…つき』
勝己の可愛い寝顔があった。
規則正しい寝息が聞こえてくる。
どうやら私は、勝己に思いっきり抱きしめられているようだった。
その力はあまりにも小学生のものとは思えないくらい、強い。
(寝顔…かわっ!
写、写真撮りたい…ってスマホないんだった
ってか力っ…強すぎじゃない…!?
ぬ、抜け出せない…)
時間を見たくてもがいてみても、全く動かない。
(…こんな可愛い勝己起こすのも気が引けるし…
抱きしめられてるの、折角だからもう少しだけ)
幸せだからいいか、と私は諦めて目を瞑った。
「…茅野ちゃん!!勝己ー!!
いい加減起きな!!」
突然、声が聞こえて再び目を覚ますと、
光己ちゃんがいた。
『…おはよう、みつきちゃん…
今何時…??』
「もう7時過ぎだよ、早く起きてご飯食べて!!」
パタパタと去っていく光己ちゃんをぼーっと見つめて、目が覚めて来た私は寝返りをうって後ろを見た。
てっきり寝てるのかと思ったが、はっきり目が開いていて目がぱっちりと合ってしまった。
『…お、はよ??』
「…はよ」
よく考えてみれば今は夏だから勝己は寝起きもいいはずだ。
冬だと間逆だけど…。
『もう、起きなきゃ』
「うん」
『離して…くれるかな』
「…」
『…おーーい、勝己??』
「…。」
『かっちゃん~』
無言で見つめながら、いっこうに力を抜かない勝己。
抱きしめられたままのため、至近距離で無言で見つめ合っているのだ。
端からみれば本当に変な光景である。
「…ん」
すると目を積むって顎をクイッとし始めた。
(へ、もしかしてこれ…)
勢いでチュッと音をたてて触れるだけのキスをしてみた。
『…おはようのちゅー、なんちゃって』
すると満足そうな顔をして腕から解放された。
(なんか甘えたモードな感じ…??
か、わいいかよ…!!)