第3章 距離
* * *
『うぎゃぁぁぁぁああ!!!!!』
「…そんな怖くねーだろ」
目に涙を浮かべて叫ぶ茅野を、勝己は呆れた顔で見て頭を撫でた。
怖いシーンになる度に茅野は少しずつ勝己に近付いて行くため、もう二人の間に距離はなく、ぴったりとくっついていた。
二人で泊まる時は、怖い映画やアニメを見るのが当たり前になっていた。
しょっちゅうお互いの家で泊まりをしているため、お互いの服やパジャマ、歯ブラシなどもきちんと置いてあってまるで同棲のようである。
『ひっ、ひっく、かっ、勝己ぃ
も、見るのやめようぅ…!?』
毎度のように泣きながら袖をつかんでいる茅野に、勝己は笑って
「しょうがねぇな
寝ようぜ」
と言って抱きしめ、背中をぽんぽんと叩いた。
電気を消して、二人で布団に転がる。
泣き疲れていた茅野は、すぐに睡魔に襲われてうとうとし始める。
まだ勝己と話したい思いから重い瞼を持ち上げて静かに話始めた。
『かつき…』
「ん?」
『私、かつきのこと好きだよ…』
「おれも茅野のこと好きだぜ」
『だからわたし、かつきのこと守りたいって思っちゃう時があるの…。
でもかつきはわたしに守られるのいやだよね…?』
「…うん」
『だから、わたしなんか比べ物にならないくらい強くてかっこいいヒーローになって
わたしを心配させない、ように…してほしいの……』
「…うん、約束するぜ」
眠気からはっきりしないからか、
心を開いたからか、
はたまたどちらもなのか。
勝己は、いつもだったらなかなか言わないような本音の茅野の言葉に驚きつつも、
(心配もさせねぇくらい、強くならないと)
と心に誓った。
茅野は勝己の言葉に安心すると、静かに眠りについた。