第3章 距離
「…むかついた」
『なんで?』
「悪口言ってたから」
『…誰の?』
「…茅野の。」
茅野は悔しそうな勝己の声に、ハッとした。
『それで…。喧嘩した、の?』
「…っ最初は!!
茅野に言われた通り手出さないで謝れって言ったんだぜ!!
…でもあいつが、それでも聞かないから…。」
震えている勝己の声を聞いて、茅野は思わずそっと抱き締めた。
『…ごめんね、勝己
私のためにしてくれたんだ、ありがとう…。』
これ以上は、何も言えなかった。
茅野のためにしたと言うのだから、とても言える立場じゃなし、
注意なんてしたら勝己が傷付くだけで、
この小さく、悔しそうにうつむく勝己を傷付ける勇気は
茅野にはなかった。
『勝己はいつだって、
私のヒーローだもんね
いつも守ってくれてありがとう…。』
「…当たり前、だ」
言い表せない気持ちに溢れて、小さな手を握りながら茅野は涙を溢した。
(…そういえば
原作だとどんな理由だったんだろう………?
や、これは考えちゃダメなやつ)
そしてごちゃごちゃになった頭の中で、こんなことを考えているのだった。