第3章 距離
無事、折寺小学校へ入学した
勝己、茅野、出久の三人。
早くも2年が経った。
その関係は、日が経つにつれだんだんと変わりつつあった。
茅野は出久の腕を肩に掛けて歩きながら、遠慮がちに口を開いた。
『…今日は、なんでこうなったの?』
「…かっちゃん達が、さっきの子…
佐藤くんともめあってて
見つけて佐藤くんを庇ったら…。
僕、何も…できなかった。」
心底悔しそうにうつむく出久に、茅野は
『出久は、優しいね
佐藤くん庇って守ってあげただけで、すごいことだよ!!』
微笑んで励ます。
(大丈夫、出久は絶対に…
立派なヒーローになる日が、来るからね)
迂闊に言ってはいけまいと、心の中で茅野は励ましながら
出久の家について、引子はいなかったため茅野は入って手当てをした。
『…はい、これでよし!!』
「茅野ちゃん、ありがとう!!」
とても小学生とは思えない、綺麗で正しい手当てだが、出久は疑問に思うことはなかった。
『よしっ、じゃあ私は勝己のとこに話聞きに行くから!!』
そう言って茅野は手早く手当てに使ったものをもとの場所に戻すと、素早くいなくなってしまった。
出久は茅野をぼーっと見つめていた。
* * *
茅野は勝己の家は走り、チャイムを押した。
『光己ちゃん~~!!』
「お、茅野ちゃん!!
どうぞ」
光己が出てきて、当たり前のように茅野を家に入れる。
茅野は迷うことなく勝己の部屋へ向かい、ドアを開けた。
『勝己!!』
勝己は不貞腐れた顔をしながら茅野を見た。
『怪我は!?』
勝己は怒られるのかと思った矢先に心配をされ、顔が少し綻んだ。
「…俺はない」
『なんで佐藤くんいじめたの…。
勝己は理由なくそんなことしない、よね?』
茅野は、三次元にいたときから気になっていた事を聞いた。
勝己は一瞬驚いた顔をして、
うつむいて小さな声でポツリポツリと話し出した。