第3章 距離
* * *
「酷いよかっちゃん…!!
これ以上は
僕がゆるさ"な"い"ぞ!!」
よくある普通の公園に、少年の声が響きわたる。
その少年の背には同じ年くらいの少年が怯えた顔をして倒れている。
「…無個性の癖に
ヒーロー気取りか?!デク!!!」
その笑みを含んだガスガスの高い声と同時に
手に小さな爆破を起こす。
それに続いて横にいた少年達も個性を発動させた。
無個性である緑谷は
成す術もなくボロボロのこてんぱんにされてしまった。
(…どうして)
『っあーー!!勝己、出久ー!!!!
着いてくんなって珍しいこと言うから気になって…』
「あ」
茅野は息を整えながらその公園を見渡した。
そしてボロボロになった出久と、倒れている少年を見つけた。
『勝己…。
また個性使って人のこといじめたのっ!?
ダメっていつも言ってるじゃん!!!!』
腰に手を当ててぷんぷんと可愛らしいお説教をする茅野に、勝己はバツの悪そうな顔をしてそっぽ向いた。
返事をしない勝己を諦め、茅野は二人の少年に駆け寄った。
『出久!!大丈夫!?
うわ、酷い傷…ごめん、私まだアレは制御難しいから、人には使えなくて…。
立てる??あ、そっちの子も…』
手を差し出す茅野。
出久は悔しそうに唇を噛みながら、茅野の手を取った。
それを勝己はキッと茅野に見えないように一度少年達を睨むと
走り去って行ってしまった。
『…はぁ…。
ごめんねっ、私がもっと早くこれてたら』
「あっ、茅野ちゃんは悪くないよ
…僕が」
弱いからダメなんだ。
今にも消えそうな出久の言葉は、風や鳥の泣き声で茅野の耳に届くことはなかった。