第2章 知らないこと
すると勝己が、
「じゃあ、やろうぜ」
と空気を変えるように切り出してくれた。
それぞれ位置について、準備が整うと
茅野は声を出した。
『出たな、敵め!!
ヒーロー茅野が倒してやるっ』
「やれるもんならやってみな!!」
「負けないぞー」
茅野は小さい頃の気分になりながら台詞を言うと、走って二人に近付いた。
そしてストップ、と念じながら二人に触れて動きを止め
『私の勝ち!!』
と一人ではしゃいだ。
解除すると、出久が興奮したように
「すっごいなぁ…!!
全然動かなくなっちゃった!!」
と茅野を褒めた。
『私の個性は時間操作なの!!
つていうか勝己
なんで本気出してくれなかったの!?』
出久の小さい頃から変わらない反応に、茅野は笑って答えると
勝己を捲し立てた。
「女に手出せないだろっ
…それに茅野は…!!」
(まだあの勝己様は出来あがってないだけに、手出せないのか…!!
でも今後のことを考えたら)
『ばか!!私は大丈夫って言ったのに!!
女の子にだってちゃんと戦えないとヒーローになれないんだからねっ』
(…こういうこと言うのが一番だよね)
勝己の今後を思って茅野はそう言うと
「…わかった
でも好きな子は傷つけられないだろ…!!」
またとんでもない言葉が返って来てしまった。
(純粋ピュアピュア勝己だめ、こわい
何でストレートにそんなこと言っちゃうかな!?
殺しに来てるよ、推しに好きな子って言われるとか………
全国の勝己ファンのみんな気絶しちゃうから!?)
そしてなんだかんだあって三人で帰路につくが、茅野の頭の中は
マセガキ勝己の言葉でいっぱいで
勝己と出久の話は全くと言っていいほど耳に届いていなかった。