第4章 The Straight Road
夜一がドサッと一護を布団の上に落とした。
「……よっと」
「夜一殿、怪我人ですぞ!」
怪我人に対して手荒な様子を見せる夜一を救急箱を持ってきた握菱が窘める。すると、「よく見てみい」と言う夜一の声。手当をするためにも握菱が服を脱がせれば傷らしい傷は1つとしてその体に浮かんでいなかった。8割方とは言わず、ほぼ完治といってもいい程の様子に握菱はほうと息をつく。
「綴の奴、また腕上げおったな」
「いやはや素晴らしい腕ですな」
「死なないと分かってたのに慌ててましたからね」
念の為にと握菱は傷の名残のある部分に薬を塗り、包帯を巻く。「疲れたわい」と居間にあったお茶を啜りながら夜一は言葉を続ける。
「あんなに必死に守ろうと思う対象が出来て良かったわ。彼奴のところに預けて正解じゃったかの」
「……そうっスね」
「綴は復讐への執心が強すぎる。復讐を遂げる為には死をも厭わんじゃろう。……あれがその楔となってくれれば良いのじゃが」
握菱が冷雨に当てられた一護の身体を人肌で暖め始める。一護が身動ぎを始めた様子に夜一はそろそろかと猫の姿に戻って伸びて欠伸を1つした。