第7章 Nostalgic Noise
「彼女が現世で行方不明になったのは今年の春でしょ。短いよ、薄い友情だ。命をかけるに足るとは思えないね」
「確かに……。俺は彼女のことは何も知らない。命をかけるには少しばかり足りないかもしれない……。だけど、一護が助けたがってる。一護が命をかけているんだ。充分だ、俺が命をかけるのにそれ以上の理由はない」
綴とは対照的に真っ直ぐと京楽を見据える茶渡の姿に覚悟を見た京楽は腰の斬魄刀に手をかけ、後ろに控えている伊勢に声をかけた。
「七緒ちゃん、彼女の足止めはお願い出来るかな?彼女には聞きたいことがあるから」
「は、はい。分かりました」
「彼女強いから気をつけてね」
伊勢が先程までいた土塀の上から京楽の隣に飛び降りた後に返事をした。その返事を聞いた京楽は何故か敵である綴に向けても声をかけてきた。
「という訳でキミもそれでいいかな?」
「え、ええ。……茶渡くん、ごめんね。少し場所を変えましょう」
綴は驚きながらも了承し、伊勢に目配せした後に瞬歩を使って2人の視界に入らない場所まで移動する。
「ごめんなさい、七緒ちゃん。あなたにはここに居てもらう」
「何ですか、いきな……りっ!?」
移動して早々に伊勢に謝ってくる綴に訝しむ間もなく土塀に縛りつけられた。伊勢は動かない自身の身体を見ると、それは『嘴突三閃』で壁に縫い留められていた。
「縛道の六十一 『六杖光牢』」
術を破ろうともがく伊勢の様子から『嘴突三閃』が破られる気配を感じた綴は上から『六杖光牢』を重ねがけする。
「嘴突三閃と六杖光牢まで詠唱破棄……。何者なんですか……?」
伊勢のその言葉に綴は眉尻を下げて返した。そして伊勢の口元に手を置き『塞』で口の動きを封じてその場を後にした。
倒した茶渡を重要参考人として保護するように指示した後、裏挺隊から藍染の死を知らされた京楽は霊圧を辿り伊勢の元に向かう。縛道で縛られている以外に特に負傷した様子のない伊勢にホッと息をつき、京楽は伊勢にかかった鬼道を破った。
「散々なやられようだね」
「……使命を果たせず申し訳ございません」
「仕方ないよ、彼女が想像以上に強かっただけさ」
鬼道に秀でた伊勢ですら破れない術を操る綴に京楽の思考の端で何かが掠ったが、それが何かは分からなかった。