第4章 The Straight Road
今流れた血を全て洗い流すような土砂降りの雨が降る。
穿界門が完全に閉じたのを確認し、2人は元戦場へと降り立った。
そこには辛うじて生命を繋いではいるがこのまま5分も冷たい雨の中にいれば、生命が尽きてしまいそうなほど虫の息である一護とギリギリ歩いて移動できるかといった程の傷を負っている雨竜が在った。
綴は傘を浦原に押し付け、慌てて一護に駆け寄り回道をかける。するとものの数秒で一護の呼吸は安定していった。
大丈夫そうだとホッと息をつき、雨竜の方を振り返れば彼は興味深そうに綴の方を見つめている。
「驚かないの?」
「黒崎がついこの間とはいえ死神になったんだし黒崎……さんもそうなのかなとは思ってたから」
同じ苗字の2人を苗字のみで区別するのは難しいため「綴でいいよ」と笑って綴は返す。その間に彼女が雨竜の怪我に触れると、衝撃で痛いと思うよりも速く文字通り一瞬のうちに傷は跡形もなく消えていたのだった。
「さすが''元''四番隊第三席。テッサイさんよりも速いんじゃないです?」
「鬼道衆総帥と比べられても……」
「どうです石田サン、痛むところは?」
「な、いです」
そう言われて確認にと腕や腹など傷のあった場所を何度か動かしたが特段痛みを感じることは無く、雨竜はただただ感嘆の声を漏らす。その反応に「そうでしょうそうでしょう」と何故か嬉しそうに頷く浦原。
「行くわよ」
そしてそんな浦原を尻目に一護を軽々とお姫様抱っこと名のつく担ぎ方をする綴を見て、これは言わない方が良いだろうと流石の雨竜も一護の面子を守ろうと思ったのだった。
「石田サン、あなたも綴サンが治したとはいえ万全じゃあない。ウチに寄って休んで行かれませんか?」
「お気遣いありがとうございます。でも僕は大丈夫。それより黒崎をよろしくお願いします」
「石田くん」
「今、奴等を倒せる可能性があるとすれば。それは僕じゃない」
刺すような雨の中、顔は見えないが拳を握って悔しそうに雨竜は言葉を吐き出した。
「……黒崎をよろしくお願いします。朽木さんを救えるのは彼だけだ」