第2章 人と国は違いますから、
嗚呼、それにしても、やけに暖かいな。
そっと目をあければ目の前には困ったように眉を下げた彼がいた。ずっと、ずっと会いたかった愛しい人。一生懸命涙を暖かい手のひらで拭いながら、お前の涙のとめかたがわからないんだと顔にかいてある。
なんだか悩んでいたのも馬鹿らしくなって、頬が緩む。抱きしめて貰えるよう手を広げると、腕を掴まれ、そして引かれた。
咄嗟のことに反応出来ず、わたしはそのまま彼の肩口にダイブする。
背中を優しくさする彼はだんまりを決め込んでいて、それはきっとわたしから話すのを待っているからだろう。彼からの信頼を感じて、なんだかくすぐったい。
肩口から離れ、目を合わす。彼の手を自らの頬に誘導して話す。友人の結婚式に行って、とても楽しかったこと。いろいろ考えてしまったけれど、あなたと会えたらなんだかどうでもよくなってしまったこと。
鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしたイギリスさんは、今度は私の胸にへなへなと顔を埋める。
「なんだよ、そんなの、マリッジブルーみたいじゃねえか...そこまで視野にいれてるなら、...」
と溢している。彼の指は小刻みに震え、形の良い耳まで真っ赤に染めている。がば、と身体を起こすと矢継ぎ早にこう述べた。