第2章 人と国は違いますから、
昔からの友人の結婚式に行った。
国と普通の人間とでは時の流れが違うらしく、久々に会った友人はわたしよりもひどく大人びていた。国の近くにいるだけで変わってしまうものなのかと、自分と友人を交互に見てしまう。
同じだけの時間を過ごしたはずなのに、わたしだけ止まっているような、置いていかれてしまっているような、そんな妙な感覚に襲われながらも式は純粋に楽しかった。
いつからわたしはこんなに情にあつくなったのだろうか。人の結婚式で泣くなんて思っていなかったのに涙が止まらなくて、どうしてもイギリスさんに会いたくなった。
我が儘はあまりいえなかったわたしも、イギリスさんと手を繋いだあの日から少しだけ駄々っ子になってしまったのかもしれない。
わたしが我が儘をいうと、イギリスさんは決まって少し困った顔をしながら笑うのだ。
それがイギリスさんの家に咲く薔薇と重なって見える。きっと、ゆっくりと時間をかけながらたおやかに花弁を開く感じがそっくりだからだろう。透き通る白い肌も真紅の薔薇と似たような色に染まるのが、もう愛しくて、綺麗で、堪らない。
あの人のあの笑顔を何度も何度も繰り返して、愛を何度も咀嚼して、少しだけチリつく胸を抑えてメールを送る。
きっと忙しくしているのだろうから、電話じゃなくてメール。本音を言えばそりゃあ勿論会いたいけれど、いくら彼の手で我が儘に育てあげられてしまったわたしでもそのくらいの配慮は出来るってものだ。
暫く返ってこないであろう返事を画面と睨めっこして待つだなんて、そんなことしてやらない。スマホを手から離して、彼女の結婚式を初めから反芻する。