第5章 2日目
「○○さん、こちらに珍しいきのこがありますよ!」
「小エビちゃーん、ジェイドに構ってないで一緒にどっか行こうよ〜。もうキノコ嫌だ」
…結果的に私は山にいた。
キノコ狩りをするために。
あの後すぐにフロイド先輩に捕まってしまい、そのまま山へと連行された。
「私はキノコも山もいやです」
「んじゃあ海に行く?やったー!」
「出来れば帰りたいのに…」
「おや、それは残念ですね。貴方には山の魅力が伝わると思っていたのですが」
小さく呟いたつもりでいたのだがジェイド先輩には聞こえていたみたいだ。
この距離で聞こえるのが凄いと思う。
このようでは愚痴もこぼせない
「○○さん、山はそろそろ飽きてしまいましたか?」
「えっと…」
山は飽きるも何も熊とかが出ないか不安で仕方なくて楽しめる暇もない。
そしてリーチ兄弟がいるし…
この場合はどう応えるのが正しいのだろうか。
とりあえず2人の機嫌を伺っていれば食われることもないだろう。
「飽きてはいないですよ。ただ歩くのがちょっと疲れちゃって」
「そうですか、じゃあここらで休みましょう」
私の嘘をジェイド先輩は信じてくれた様だ。
「○○さん、飲み物いります?」
ジェイド先輩は飲み物を私に渡してきた。
私に気をつかってくれるんだ…
ジェイド先輩は何考えてるかよく分からないし怖いけどフロイド先輩よりは全然マシだ。
行動は紳士的だし。
昨日一応酷い事されたけどどうやら2人はそこまで気にしていないらしく、何ともなく振舞っている。
昨日の事を意識してしまっている自分が返って恥ずかしい。
昨日の出来事は大した事ないものだった、ということに捉えていいんだよね。
いっそ忘れてしまうのが身のためだ。