第5章 2日目
「おやおや、私の名前を覚えていらっしゃったのですね」
「そりゃあ昨日あんな事されたら誰でも…あっ、グリム!」
「ああ、そうそうこの狸を拾ったのですが○○さんに返したいと思いまして。」
ジェイド先輩が片手でグリムを持っていた。
どうやらグリムは気絶しているらしく、反応がない。
「グリムに何したんですか」
「…おやおや、そこまで警戒しなくても私はただこの狸が面倒ごとをしそうになっていたので止めただけですよ」
そうならば感謝しなければ。
でもこの人が言うことだから嘘かもしれない。
…いつから私は人を疑い深くなったんだ
ジェイド先輩は良心でこうやってくれたのかもしれないし。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ジェイド先輩は素直に私にグリムを渡してきた。
グリムは気絶と言うよりも寝ているようだ。
どうやらグリムに危害は加えていないようだし、素直にグリムを渡してくれたからジェイド先輩は嘘をついていなかったようだ。
リーチ兄弟はとても危ない人だと思っていたのだが、今日の2人の様子をみて中身は普通の人とはあまり大差はないことが分かった。
「この後僕はきのこを採取に行きたいと思うのですが○○さんもどうですか?」
「行きませんので大丈夫です」
「えー、小エビちゃん行かないの?俺たちと一緒に行こうよ〜」
「ひゃあ!!フロイド先輩?!」
「ひゃあだって!あははは!!かわい」
気配もなく後ろからいきなり抱きしめられたら誰もが驚くだろう。
そこまで笑わなくても良いのに。
というよりなぜフロイド先輩はまた私の所へ来たのだ。
偶然にしても出来すぎてる。
「おや、フロイドもきのこ採取に行くのですか?この前はきのこは嫌いだと言っていたのに」
「あれはジェイドが毎日きのこ料理ばっか作るからじゃん」