第3章 私の魔力
「ここです」
「ここって…かなりボロボロじゃないですか…」
「それもそうですね…空き寮ですもん。
でも嫌と言ったら外で寝るしかありませんよ?
掃除すれば使えなくもないでしょう。
今日はここのお掃除を頑張って下さいね」
「学園長も手伝ってくれれば少しは楽のに…」
「あー、お仕事が忙しい忙しい」
学園長はわざと聞こえるように呟いて去ってしまった。
それにしてもかなり雰囲気が出ている寮だな…
ちょっと怖いけどそれなりにも頑張れは少しは雰囲気も良くなるはず
「よしっ、頑張ろう!」
私は腕をまくってオンボロ寮の中へと入っていった。
そういえば学園長に自分は女だと伝えるのを忘れてしまった。
おそらくあの様子じゃ私の事を男だと思っていると思うし…
明日伝えに行こう。
それから何時間経った頃か、オンボロ寮では人が住める程度まで綺麗にできた。
「ふうっ…」
私はため息をついてさっきまでは埃と蜘蛛の巣だらけだったソファーに座った。
外を見るとすっかり日が暮れ、雨が降っていた。
「…お腹空いた…」
ふと出た言葉はこの言葉だった。
よくよく考えてみると今日は何も食べていない気がする。
学園長は衣食住を保証すると言ったはずた。
こんな早くにも約束を破ってしまうのか。
「ふー、雨宿り雨宿りっと…」
どこかで聞き覚えのある声が聞こえた。
私は即座に声が聞こえた方に目をやると、昼間のしゃべる狸がいた。
「あっ!オマエは昼間の!
オマエのせいであの後オレ様はあの赤い男に首輪まではめられて外に放り出されたんだゾ!
まあ、当然グリム様はまた学園内に入り込むのは楽勝だったけどな!」
追い出されたのは間違いなく式場を火の海にした貴方のせいだと思うんですけど。
それにまた不法侵入したら追い出されるに決まってんじゃん。
私は掃除に疲れていて鋭いツッコミを入れる気にはならなかった。
「この寮まで燃やさないでね」
「流石に燃やさねぇゾ!とにかくお前の来ている制服をオレ様にくれ!」
「嫌だよ、だって着るものなくなっちゃうもん」