第5章 愛玩する僕の心を恐ろしく思った【薄桜鬼】
未だ眠ってるかな?
ううん、眠ってたっていいや。
今直ぐにちゃんに会いたい。
今直ぐにちゃんに触れたい。
其の勢いの儘ちゃんの部屋の襖を開けると、ちゃんは床の中で起きていてくれた。
「……沖田さん?」
突然訪れた僕を不思議そうに見上げながら上体を起こすちゃんを、膝を着いて抱き締める。
「こんなに朝早くごめんね。
でもどうしてもちゃんに会いたくて。
……怒った?」
僕の腕の中で首を振ってくれるちゃん。
ああ……本当に君が愛おしくて堪らない。
「ねえ…君を抱きたい。
ちゃんを僕に頂戴。」
少しだけ躊躇った様子を見せたちゃんは、其れでも拒まず頷いてから答えた。
「はい。
沖田さんは最初に私を救ってくれたから。
御礼で……」
其の口を僕は二本の指で塞ぐ。
「御礼じゃないよ。
僕はちゃんが好きなんだ。
ちゃんが好きだから抱きたい。
だからもし、ちゃんが僕の事を好きじゃないなら
ちゃんと拒んで。
僕を好きじゃないちゃんなら……要らない。」
途端にちゃんの頬は真っ赤に染まり、だけど其の大きな瞳は不安気に揺れていた。
「だって……
私、穢い。
綺麗な沖田さんが汚れちゃう……」
君は僕の事をそんな風に思ってくれていたんだ。
其れが凄く嬉しくて、だからこそちゃんが可愛くて、僕の両手はちゃんの火照った頬を包み込む。
「僕は綺麗なんかじゃ無いし、
ちゃんも穢くなんか無いよ。
聞きたいのは一つだけ。
ちゃんは僕の事……好き?」
「私……私は……」
「……言って。」
「好き。
沖田さんが好き。」
「うん。」
こうして微笑みあった僕とちゃんは、其の儘縺れ合う様に床へ倒れ込んだ。