第5章 愛玩する僕の心を恐ろしく思った【薄桜鬼】
其れからの僕は、出来るだけちゃんと関わるのを避けて過ごした。
本当はもっとちゃんに触れたいって思っていたけど、《あの》恐怖が忘れられなかったんだ。
其れでも時々は顔を見に行ったし、ちゃんの体調にも気を配る。
『お前を閉じ込める訳じゃねえから、屯所内なら好きに出歩いて構わない。』
土方さんがそう言ってくれたおかげかな。
初めの内は殆ど部屋から出なかったちゃんも、最近では縁側で日向ぼっこしてたり、中庭を散策する様になっていた。
『俺達も協力するから』と宣言した左之さんや平助が、ちゃんと話している姿も頻繁に見掛けて………
何故だか僕の心は、ざらざらとささくれ立つ。
………きっとちゃんの笑顔の所為だ。
左之さんも平助も優しいから、ちゃんが僕なんかより慕うであろう事は簡単に予想出来る。
だけど僕には見せない含羞んだ様な笑顔も、嬉しそうに上げる軽やかな笑い声も……
目や耳にする度、僕は静かに嫉んだ。
ちゃんを独り占めしたい……って。
どうして此れ程ちゃんに執着するのかな……僕は。
勿論、ちゃんの境遇に同情も有るだろう。
僕好みの愛らしい容姿も理由の一つかも。
でもね……そんな軽易な事じゃなくて、もっともっと深い部分でちゃんを求めている自分が存在するのも確かなんだ。
こうして悶々と過ごす毎日に辟易した僕は、思い切ってちゃんと正面から向き合ってみようと思った。