第1章 溺れる復讐【イケメン戦国】
そうなればもう、私には躊躇う理由など欠片も無い。
生涯信長様に愛し続けて貰えるのなら、自分の身体も……
貞操すらも簡単に投げ出せた。
だから私の方から信長様に提案したんだ。
私が信長様の寵姫であると世間に知らしめる事。
信長様は『幸運を齎す女』を失うのを何よりも畏れている事。
この策については三成くんが上手い具合に世間に流布させてくれた。
後は……安土城で囲われている風変わりな女が頻繁に城下町へ訪れる事。
この女が《そう》だと市井の人々に思わせる事。
その結果………
私は簡単に拐って《貰えた》。
勿論、直ぐに斬られてしまう可能性も考えたけれど、それでも私は顕如さんが僧侶である事実に賭けたんだ。
そしてその賭けに勝った。
顕如さんは私の命を奪うよりも、私を穢す事によって信長様への復讐を果たそうとしている。
その行為も、顕如さんにとってはかなり苦痛の様子だけれど。
私の胎内へ顕如さんの子を仕込む事にどんな意味があるのかは未だに理解出来ないけど、そんな事はどうでもいい。
生きてさえいれば、私は信長様の期待に応えられるのだから。
顕如さんは『安土の武将共が血眼になって私を探している』と言った。
だけど、皆が探しているのは《私》ではなく《この場所》だ。
ううん……《この場所》はもう既に信長様にも悟られているだろう。
私と信長様でこの策を決めて以降、信長様に指示を受けた光秀さんが常に私を尾行していた筈だ。
当然光秀さんは私が拐われる場面を目撃し、どこに囚われているのかも把握しているに決まってる。
信長様から告げられた期間は三月(みつき)。
三月が過ぎれば私が顕如さんを籠絡していようがいまいが、ここに安土の兵が乗り込んで来る。
その期限まであと五日………
だから今夜……
私は……