第5章 愛玩する僕の心を恐ろしく思った【薄桜鬼】
「うん。
此処に居る皆が君を名前で呼ぶよ。
だから、教えて?」
「………。」
「ちゃんか。
可愛い名前だね。」
こんな事で堪らなく嬉しそうに身体を弾ませ笑う此の娘が可哀想で……
何故だか愛おしくて……
僕の手は自然と彼女の頬を撫でていた。
途端に強張った彼女の身体が小刻みに震えるのを感じて僕は酷く後悔する。
そうだ、此の娘に容易に触れるなんて許されない。
「ごめん……怖がらせちゃったね。
大丈夫、もう君に酷い事をする男は居ないから。」
手を放して微笑む僕に……
突然、彼女の方から身を寄せて僕に口付けて来た。
「え……どうして……」
「御礼。」
「……御礼?」
「だって、皆が悦んで私にこうしてた。
男の人は嬉しいんじゃないの?」
皆って……
此の娘が相手をさせられていたのは、あの男だけじゃないんだ。
ああ……もう本当に君って……
「うん……嬉しいよ。
でもね、こんな事を君からはしなくて良いから。」
「しなくて……良いの?」
「そう、君からは…ね。
だから、僕からしても良いかな?
勿論、君が嫌だと思った時は僕を蹴り飛ばしても構わない。」
そう言って顔を寄せても彼女は嫌がる素振りも見せず、僕をじっと見つめる。
其の態度を了承だと受け取った僕は、彼女の肩をそっと抱き寄せ
「可愛いね……ちゃん。」
ゆっくりと唇を重ねていった。