第5章 愛玩する僕の心を恐ろしく思った【薄桜鬼】
「何なんだ……此の女は?」
先ずは土方さんが真っ当な疑問を口にする。
勿論其の疑問に対する答えを僕達が持っている訳が無い。
そんな事は土方さんだって分かっているだろうけど、そう声に出して仕舞う程に彼女の姿が異様だったという事なんだ。
「………飼われてた…のか?」
恐る恐るといった様子で左之さんが絞り出した声が正解なのだろうと、此処に居る全員が小さく喉を鳴らした時……
僕の視線と彼女の視線が確りと絡み合った。
威嚇する様でいて怯えを滲ませた大きな瞳に、どうしてか僕は強烈に惹き付けられる。
「はあ……此の儘放って置く訳にもいかねえ。
此奴も会津藩に渡すぞ。」
厄介事に巻き込まれたと言わんばかりの土方さんの物言いに、弾かれた様に異を唱えたのは僕では無く平助だった。
「そんなの……可哀想だよ。
藩に渡したら、きっと拷問を受けちまう。
今だって酷い状態なのに、此れ以上苦しめるなんて……」
うん、正に優しい平助其の物な言い分だ。
そして、其の言い分は恐らく正しいだろう。
此の娘は攘夷志士に関する何かを知っているだろうと散々に詰問される事になるよね。
詰問だけで済む筈じゃ無いのは安易に想像出来る。
其の先は拷問……
こんなに愛らしい娘なんだから、拷問の方法も男相手とは違う更に下劣な物になるだろう。
僕だって容易に予想出来る位なんだから、当然皆だって同じ事を考えてるに違いない。