第4章 Destined future【イケメン戦国】
「そんな信長様は私が国に戻る際、
父宛に文を書いて下さったんです。
『徳川家康は将来、此の日ノ本を担う大人物である
其の奥と相成れば娘御も其国も永劫安泰であろう』って
書かれていました。
信長様の御墨付きとなれば
父も掌を返した様に満悦で私を送り出したんですよ。
現金な物ですよね。」
然も可笑しいと言わんばかりに笑う姫。
でも、俺は………
「俺……あんたに酷い事を為た。
酩酊させて意識と身体を奪って……
あんたはそんな俺でも良いの?」
怯える様を隠しもせず問い掛ける俺の手に、姫はそっと両手を重ねてくれる。
「其れに付いては、私も少々戸惑いましたけど………
でも家康殿が其所迄私を求めて下さる事は
悦びでしかありませんでしたよ。」
ああ……あんたは全部分かっていたんだ。
俺があんたを操っていた心算で居たけど、俺の方が手玉に取られてたって訳だ。
でも、不思議だな。
全然悔しくなんか無い。
俺の方こそが歓喜に打ち震えてるんだ。
「其れに……
家康殿の策のお陰で予想よりも早く
私は孕む事が出来ましたし。」
臆面も無く言い切って含羞む姫に、俺の毒気も抜かれて仕舞う。
だけど未だ、一番大事な事を聞いていない。
「ねえ……
どうしてあんたはそんなに俺の事を?」
じっと俺の目を見つめ少しの間無言で居た姫は……
「竹千代君。」
唐突に其の幼名を呼んだ。
「『誰よりも強くなって必ずを迎えに来る』
其の約束を忘れていなかったのは、
貴方だけじゃ無いんですよ。」
そう言って少し得意気に微笑む姫を、俺は堪らず引き寄せて力一杯抱き締める。