第4章 Destined future【イケメン戦国】
其れからの俺はどうやって日々を過ごしていたのか自分でも碌に覚えていない。
そう、俺自身が朝鮮朝顔に冒されたみたいに。
砂を噛む様な毎日を繰り返し三月が過ぎた頃、俺は呼び付けられた天主にて信長様と二人向かい合う。
無気力さも顕にぼんやりとする俺に、信長様はいつも通り単刀直入に語り出した。
「家康……
貴様に縁談が有る。」
「……は!?」
此れには流石に声を上げる。
「《徳川家康》に娶って欲しいと望む姫が居るのだ。」
「はあ……
何なんですか、其れ。
冗談にも程があります。
大体、未だ信長様の縁談も纏まっていないのに
俺が先になんて、可笑しいでしょ。」
「順序など無意味であろう?
こういった物は時宜だ。
好機を逃すと悔やむ事になるぞ。」
「だからって……」
「四の五の吐かすな、家康。
断るのは其の姫の顔を見てからでも遅くあるまい。
………入れ。」
そして静かに開いた襖の向こうから天主に入って来たのは……………
姫だった。
「お久し振りで御座います、家康殿。」
驚き過ぎて声も出せない癖に、俺に向かって綺麗な所作で三つ指付く姫は相変わらず麗しいな…なんて呑気な事を考える。
呆けた儘の俺を見遣った信長様は酷く愉快そうに喉を鳴らして言った。
「さて……どうする、家康?
此の縁談、断るか?」
「どうして……」
「言っておくが……
姫の腹には既に貴様の稚児が宿って居る。
心当たりが無いとは言わせんぞ。
さて、其れを踏まえて……
どうだ、家康。
破談とするのか?」
何故こんな状況に為っているのか、考えても考えても腑に落ちない。
其れでも俺はたった一つだけ、迷う事の無い想いを言葉にした。
「此の縁談……
謹んでお受け致します。」