第4章 Destined future【イケメン戦国】
其れ以来、俺は毎日姫を伴って出掛けた。
城内は勿論、城下町も具に観て廻る。
秀吉さんや政宗さんの様に気が利く訳でも無く、口下手な俺が相手では嘸かし退屈だろう。
本当にどうして信長様は俺なんかを世話役に選んだのか未だに理解出来ない。
其れでも姫は厭な顔一つせず、俺と一緒に過ごしてくれた。
内心どう思っているのか分からないけど、少なくとも愉しそうに笑う姿に俺は心底安堵したんだ。
偶に出会す政宗さんや光秀さんには
『そうして居るとまるで似合いの夫婦の様だな』
なんて揶揄われたけど、俺は当然……
姫も満更じゃない様子で笑ってくれるのは純粋に嬉しかった。
そんな日々の中、俺の御殿に滞在する姫の食事に…………
俺は《薬》を入れ続ける。
いや……《薬》じゃないな。
朝鮮朝顔の種子から精製した粉末を、少しずつ食事に混入させているんだ。
此れは一気に摂取すると精神錯乱や昏睡が起きて仕舞うのだけど、僅かな量を続けて摂れば普段の意識をぼんやりとさせる事が可能だ。
通常の生活をしながらも、物事を深慮出来なくなる。
そう、只単に疲労している様に見えるだけ。
其の効果が顕れているんだろう。
此所最近の姫は此れ迄の聡明な言動は見られなくなり、俺の言う事にも幼女の様に微笑みながら頷くだけに為っていた。
常に行動を共に為ている人間なら『何所か可笑しい』と気付くかもしれないけれど、偶に挨拶を交わす程度の皆には悟られない自信がある。
ねえ、……………
そろそろ、かな。