第4章 Destined future【イケメン戦国】
姫を自分の御殿に連れ帰りながら、俺はこうなって仕舞った信長様との遣り取りを思い返す。
「は……?
どうして俺なんですか?」
「貴様が適任だと思ったからだ。」
「いやっ……
俺なんかより、秀吉さんとか政宗さんの方が……」
「喧しいぞ、家康。
俺が決した事だ。
大人しく従うが良い。」
信長様がこう言い切って仕舞えば、其れが覆る事は絶対に無い。
反論する労力も時間も無駄なんだ。
其の上……
「世話役である貴様の御殿に姫を滞在させろ。
そうした方が色々と面倒も無くて良かろう。
滞在に関わる必要物資は俺が用意する。
何でも遠慮無く言うが良い。」
そう言って不敵に笑う信長様に、俺は反論の言葉など言える筈も無かった。
結果、姫を伴い御殿に向かっている訳で。
其の途中には、此の不可解な状況について姫にも聞いてみた。
「あの……
本当に此れで良いのですか?」
「此れ……とは?」
俺を真っ直ぐに見つめて首を傾げる姫の麗しさに鼓動が跳ね上がる。
情けない事此の上無いけど、俺は姫から視線を逸らして続けた。
「貴女の世話役が俺なんかで良いのでしょうか?
然も城では無く俺の御殿に滞在するなんて、
何故、信長様はこんな失礼な事を……」
「失礼だなんて、とんでもない。」
姫はころころと鈴が鳴る様な笑い声を上げて、少し俺に寄り添う。
「徳川家康様に御相手して頂けるなんて光栄です。
我が国でも安土に集う皆様は名を馳せておられるのですよ。
特に家康様は信長様との絆も深く、
優れた御仁だと伺っています。」
まさかの言葉と、姫から漂う上品な芳香。
………こんなの、照れるなって言う方が無理。
いつもよりゆっくりと歩く俺から一歩下がった姫も、含羞んだ様子を隠す事無く俺に従い歩いていた。